14【学習法編-4.文法編・第1回】 文法は「別格」の重要度?
単語・熟語の暗記をこなした方は、ついに文法の学習に入ることになります。なぜ「ついに」というのか? それだけ文法が「別格」の存在だからです。英語を学習する上で「<単語→熟語→文法→構文(単文精読)→長文読解>という順序を絶対に崩せない」と準備編・第3回でお伝えしました。どの項目も外すことはできないのですが、文法だけは重要度の格が全く違うと思ってください。
「別格」である理由は? 文法は英語の幹?
文法が突出して重要である理由は簡単です。もう書かれています。「文法」=「文」を組み立てる「法」則だからです。この重要度が当たり前だと捉えられるかが大切です。英文一つ一つがこの法則によって組み立てられる幹であり、単語・熟語はそれに付随する枝葉といえます。そして英文が集まると長文という森が出来上がるというイメージです。つまり全てはこの幹から派生します。
そのため、この法則(ルール)を身に付けずに英語を読むことは不可能であり許されません。そして言葉というものは同じルールを身に付けた者同士が発信し、受信することで初めて意味を持ちます。これは③【役に立つ寄り道・第1回】で「言語は内容を『客観的に(論理的に)』読んでもらえなければ存在している意味がない」と述べたのと同じことです。
ルールを知らないで読むとどうなる?
【役に立つ寄り道・第1回】と重複しますが、大切なことなのでもう一度例を出して文法というルールの重要性を確認します。
例えばAさんが「私の母が今朝亡くなりました」とBさんに英語で伝えたとします。Bさんは正確なルールを知らず単語だけを拾って意味を受け取ったとします。
Bさんの知っているルールは適当なものなので、「今朝もお母さんは元気だったんだな」と真逆の意味で捉えても不思議ではありません。Aさんは「亡くなった」という事実を伝えたのにBさんの頭の中では「元気」ということになります。これがさらにCさん・Dさん…と正確なルールを知らない人たちにどんどん伝わっていったとしたらどうでしょう? Aさんは言葉を発信した意味がまるでなくなります。
これがもし「我が国の大統領が今朝亡くなりました」という情報だったら、と考えるとルールの重要性が一層よく分かるのではないでしょうか? 情報(言葉)を受け取った国民・世界の人々の「それぞれの」頭の中で「大統領が生きていたり死んでいたり」しては、情報を発信する意味がないばかりか人々に大混乱をもたらします。
そこで間違いなく言えるのは「言葉を発する」=「統一された文法(ルール)が必ず必要だ」ということです。
これを逆から考えると、先ほど「英語を学習する上で文法は別格に重要」といった意味がよく分かるはずです。
つまり「正確なルールが身に付いている」=「言葉が必ず理解できる」ということなのです。
「文法はまだ中途半端だけど長文に取り掛かろうかな」・「単語・熟語はしっかり暗記したから、文法なんかたいして知らなくても流れで文は読めるだろう」といった考えは完全に間違っていることがもう分かるでしょう。このような考えで「勝手に」文を読んでも、それぞれの頭の中に「勝手な(=統一されていない)」意味が作られるだけで、すでに言葉を発信した意味はなくなっているのです。当然これでは英語は身に付きません。
次回から文法の具体的な学習法に入っていきます。
15【学習法編-4.文法編・第2回】文法書はなぜどれも約20章なのか?
前回は「文法の重要度は別格」ということをお伝えしました。その学習を進めていく上で核になるのが1冊の「文法書」です。高校に入学すれば普通はすぐに買うように言われますし、社会人の方でもその時代に手に入れたものがあれば十分です。また「大学受験用」・「英検2級用」など、自分の目的に合ったものでもかまいません。ただし、「自分にとって一番(他の本より)分かりやすいもの」であり「項目別に文法を網羅していて、学習順がはっきりしていているもの」でなければいけません。今回と次回でこの文法書の活用法(=文法の学習法)を紹介していきます。
約20章は順序までほとんど同じ?
立ち読みでも手元のものでもかまいません。文法書の目次を見てみてください。どの本でもおおよそ20章で構成されています。これは「必要な文法知識は決まっている」ことを示しています。さらにいろいろな文法書を見比べてみると分かるのですが、各章の順序もほとんど同じです。
例えば「第1章 五文型」・「第2章 時制」…というようになっているはずです。順序まで同じであるということはその必然性があるということです。例えばどの本を見ても「比較級」という項目は・「五文型」・「時制」よりも後にあります。なぜなのかというと「比較級の文」の中には必ず「五文型」・「時制」が含まれているからです。ちなみに「五文型」に当てはまらない文はなく、「時制」のない文は存在しないのでこの2項目は必ず最初の方に置かれているのです。
つまりどの文法書でも順序は論理的に組み立てられているので、最短ルートでの学習を目指す場合にあえてこれを崩して学習する必要はなく、さらには「絶対の順序」とも言えます。
文法学習の最短ルートには問題集も1冊する
文法書に加えて問題集も1冊必要です。できれば文法書準拠のものが好ましいです。なぜなら学習を項目ごと(各章ごと)に行っていくので、文法書と項目(学習範囲・学習内容)が一致しているのが理想的だからです。その中でも「なぜその答えになるのか」という解説がなるべく詳しく、自分にとって分かりやすいものを選んでください。
次回からこの2冊を使った最短ルートでの文法学習を具体的にお伝えします。
16【学習法編-4.文法編・第3回】文法書と問題集の2冊を使った「高速回転法」とは?
前回「文法書」・「なるべく文法書と項目が同じ問題集」の2冊を用意して欲しい、という話をしました。
今回はこの2冊をどう使っていけば文法学習の最短ルートを進めるのかを解説していきます。
なお、文法・構文(単文精読)・長文読解の3つは後に「講義編」を設けて授業をこのサイトで行っていく予定です。そちらも期待してお待ちいただければ嬉しく思います。
文法学習の「高速回転法」は「10日ワンセット」? 具体的な文法学習法を公開
「高速回転法」という方法・秘訣については単語編・熟語編でお伝えしましたが、文法ではこの方法を少し工夫して用います。
具体的には「文法書の第1章を理解しながらしっかり読む⇒問題集の同じ項目を解いて、理由がはっきり分かりながら正解ならば『合格印』」というのが第一歩目です。ここで「合格印」を付けるのはあくまで「なぜその答えになるか他人にも説明できるもの」ものだけに限ってください。単語・熟語の暗記と違って、文法は全く同じ設問に出会うために学習するわけではないので、「たまたま」の正解ではマズいのです。必要なのは正しい文法知識の「理解」です。それが分かっていれば「合格印」です。
ここから次にまた同じ第一章をこなすのは文法の高速回転法としては不適格です。単語などの「意味のない羅列」を暗記しているのはないので、同じ項目を読んで・問題を解いても記憶で解けてしまうことが多く、次に同じ文法項目に出会っても形が違うと役に立たないからです。
そこで「第2章」へと進んで同じように文法書を理解しながらしっかり読む⇒問題集の同じ項目を解いて、理由がはっきり分かりながら正解ならば「合格印」と、どんどん次の章へ進んでください。
約20章を「10日で1周」できるように「1日2章ずつ」は進むのが目安です。しっかり理解しながら文法書を読む作業に初めは時間がかかるでしょうから、1日2章でも数時間はかかるでしょう。
この「10日ワンセット」を終えたら11日目からまた第1章に戻って同じことをします。ただし「合格印」の付いている問題は解かずに飛ばします。理由が分かって(根本を理解して)解けた問題に合格印がついているはずなので、わざわざもう一度解かなくても大丈夫です。11日目からはなるべく多くの新たな合格印を付けられるようにまたしっかり文法書を読んで問題に向かってください。
「10日ワンセット」を繰り返して、全ての設問に合格印が付いたら1冊目の「問題集は」終了です。
いよいよ文法学習終了までの具体的な学習法へ
1冊が完了しても「文法学習が終了」とまで言えないのは単語・熟語と違って同じ文法知識でも切り口によってガラッと設問が変わるからで、3冊は問題集をこなしたいところです。ここでのコツは2冊目からはいきなり問題集に取り掛かってかまわないという点です。1冊目の設問全てに合格印が付くまで文法書を相当な回数読み返したはずなので、ここからは「設問が解けなければ文法書に戻って復習する」という使い方の方がムダがないでしょう。こうして3冊の問題集全てに合格印が付いたら晴れて文法を卒業できます。(どのような文法書・問題集を選ぶべきか迷う方のために、単語集・熟語集と併せてお勧めの本を次回紹介します)
さて、しっかり単語・熟語暗記の最短ルートをこなしてきた方は「あれ? 高速回転法って『7日ワンセット』じゃないの?」と思ったはずです。確かに「ヒトの記憶は8日目からガクッと落ちるので7日をワンセットにする」と述べました。しかしあれは「意味のないものの羅列」である場合です。文法はしっかり意味があるので、ワンセットを短くしすぎても設問ごと覚えてしまっているのか根拠から理解しているのかが自分でも分からないまま問題集が解けてしまう可能性があります。そこであくまで目安ですが「10日ワンセット」ほどが文法の場合には適しているのです。
文法学習での最大のコツとは?
「文法用語をなるべく覚えないこと」が最大のコツです。例えば「独立分詞構文」という言葉を頑張って記憶しても1点にもなりませんし、実際に英語学習は進んでいません。ポイントは「独立分詞構文」を「使いこなせるか」だけにあります。使いこなすために便利なラベルとして文法用語があるので、文法用語を必死に覚えるのは本末転倒なのです。自分が混乱しそうになったときにだけ、頭を整理するために最小限の用語を覚えればいいのです。(これは後の講義編でさらに具体的にお伝えします)
17【学習法編-5.単語~文法まとめ編】プロが完全仕分け! 単語集・熟語集・文法書・文法問題集の良書・悪書
これまで読んでいただいた方の中には「単語集などを自分で選べない」・「自分で選んだ本が最適か不安」という不安がある方も多いでしょう。そこで今回は今まで必要だと述べてきた単語集・熟語集・文法書・文法問題集の5つについてお勧めの本を紹介していきます。対象は中学の範囲は問題なく、高校の範囲になって初めてつまづいてこのサイトをご覧になっている方向けにしてあります。高校生はもちろん、高校の学習範囲からやり直して学習している(これから学習を始める)方に、プロから見た「分かりやすく・内容も完璧に詰まっている」良書と悪書を、みなさんが気になるであろう人気の本の中からあえて挙げていきます。
- 単語集はムダなものをいかに省いているかで選ぶ
- 熟語集は「ムダのなさ」・「どうしてその意味になるのかの解説がある」の2点で選ぶ
- 文法書は「学習項目が分かれている」・「詳し過ぎることなく身に付けるべき文法を分かりやすく解説している」・「問題集と合併されていない」という2点で選ぶ
- 文法問題集は「学習項目別になっている」・「なぜその解答かについての解説が詳しく・分かりやすい」という2点で選ぶ
単語集はムダなものをいかに省いているかで選ぶ
「高速回転法」での暗記に最適な単語集はいかに「ムダがないか」で決まります。「例文の中で暗記しよう」というコンセプトのものは避けるべきです。その例文さえ理解できない第一歩として単語暗記をするわけですから。また熟語集と合併されているタイプの本も避けるべきです。
良書
新TOEIC TEST 出る単特急 金のフレーズ
これら3冊にはムダがなく、単語暗記の高速回転法に適しています。例文はありますが、その例文を覚えてしまうことを推奨しているわけではないので、単語がどう使われるのか軽く目を通すだけにとどめるのがコツです。
悪書
速読速聴・英単語(Core 1900)ver.4 [ 松本茂(コミュニケーション教育学) ]
悪書である理由は先にあげた通りで、「熟語集と合併している」・「例文を覚えることで単語を覚える、というコンセプトになっている」ということです。
熟語集は「ムダのなさ」・「どうしてその意味になるのかの解説がある」の2点で選ぶ
良書
これら4冊は単語集同様にムダがなく、例文がありながらそれを覚えることを中心としていないので、高速回転法に適しています。
悪書
TOEICテストぶんせき英熟語 (データベースDEイングリッシュシリーズ)
これらが悪書である理由は「例文暗記を基にしている」・「問題集と合併してしまっている」という点です。
文法書は「学習項目が分かれている」・「詳し過ぎることなく身に付けるべき文法を分かりやすく解説している」・「問題集と合併されていない」という2点で選ぶ
良書
総合英語Forest 7th Edition
ロイヤル英文法―徹底例解
これら4冊は間違いなく良書ですが、「学習の第一歩」として持つことを考えると「総合英語Forest 7th Edition」が圧倒的にお勧めです。そもそもこの本の構成・内容(分かりやすさ)を上回る文法書は今のところ現れていません。それほど圧倒的な存在です。他3冊は良書には違いないのですが詳しすぎるので、学習が進んだ時点で購入を考えるべきでしょう。
悪書
一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)
英文法に関する悪書は挙げるとキリがないので1冊だけ紹介します。人気は高い本ですが、「話すための」というコンセプトでは最初から文法を学習するには不適格です。
文法問題集は「学習項目別になっている」・「なぜその解答かについての解説が詳しく・分かりやすい」という2点で選ぶ
良書
総合英語Forest(7th Edition)解いてトレーニング
Next Stage英文法・語法問題―入試英語頻出ポイント218の征服
前回、「文法の問題集3冊解く」と述べましたのでお勧めも3冊としました。ただし3冊目だけは学習項目別になっておらず語法も含んでいるので、他2冊を終えてからのまとめとして取り組むべきです。
悪書
翻訳英文法方式による英日翻訳トレーニング・マニュアル〈1〉名詞・代名詞・形容詞・副詞篇 (バベル・トレーニング・マニュアル・シリーズ)
「英文法」と銘打っていながら構文を理解していないと利用できない点で不適格です。
今回はみなさんの学習が進みやすいように学習本を厳選しました。「悪書」としてあるものも、あくまで「筆者の最短ルートの学習法にとって」・「学習初心者にとって」という面からの評価です。
18【学習法編-6.構文編・第1回】あなたが今まで受けてきた間違った構文の授業とは?
単語編・熟語編・文法編と順にきて「構文編」に入ります。構文=単文精読とも呼ばれますが、簡単にいえば「1文に使われている単語・熟語・文法を全て使って論理的に読み、意味が分かること」を指します。今まで学習してきたことを全て使ってついに「英文」に触れることになります。当然この1文1文が集まって長文となるのですから、学習のゴールは近いことが分かるでしょう。そのためもちろん単語・熟語・文法に少しでも学習が足りないことは許されません。不安な方は今まで紹介した学習法通りしっかり身に付いているかを確認してからこの構文の分野に進んでください。
そしてこの構文の分野が学校の授業などで(予備校でさえ)教えられるとき、非常に意味のないことを聞く側は強いられています。「だから今まで英語が分からなかったのか」とその理由を知ることになると思います。まずこの点をお伝えしてから正しい構文の学習法を紹介していきます。
「ダメな授業=結果だけを伝えて分かったつもりにさせる」とは?
学校授業などで長年展開されているムダでしかない構文の授業をまず例に出します。
The truth that you know is important.という文があったとします。ここで「thatは関係代名詞なので、『The truth that you know』は『あなたが知っている真実』と訳しますね…」と進んでしまうのです。この一言目でこの授業はダメだと判断できます。
それは「thatが関係代名詞だと初めから分かるくらいなら初めからこの授業など受けなくてもいい」からです。この最重要点を無視して進められる授業が横行しています。生徒はthatにマークを付け「関係代名詞」と書いて次へ進んでしまっておしまいです。
この授業ではいったん分かったように思えても何の役にも立っていません。先に述べた通り「関係代名詞だと自分で判断できないと意味がない」からです。全く同じ文にこの後出会うことはまずないので、「どうして関係代名詞だと判断したか」という理解が必ず必要なのです。これが分かれば自分でどんな文でも読んでいく構文の力が身に付きます。これをせずに結果だけを聞いていては英語力は永久に上がりません。寝ていた方がマシでしょう。
視点を真逆に! 自分で構文が理解できるようになる真の学習法とは?
「結果『から』伝えられる授業は全くムダ」と関係代名詞thatを例にして述べました。自分で根本から理解してどんな文でも読めるようにするためには「結果『に』正確にたどり着けるように読むこと」がカギです。つまり例で挙げたダメな授業の逆から学習しなければいけないのです。
この場合はthatがポイントになりますが、自分で「このthatは関係代名詞だな」と判断できるようにトレーニングするのが構文の学習だということです。
では具体的にはどうしたらいいのでしょうか? すでにヒントは上で述べてあります。「そこに使われている単語・熟語・文法を全て使って論理的に読んで、意味が分かること」という部分です。構文をいきなり学習するのではありません。単語・熟語・文法の積み重ねをフル活用して理解するのです。
thatの区別(基本5つ) | |||||||||||||||
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この5つは単語・熟語・文法の学習で覚えた中に必ず含まれていて、それを「thatにはどんな使い方があるのか」という視点で整理しただけです。
このように視点を真逆にしてください。文中にthatを見つけたらこの5つの使い方がすぐに頭に浮かぶまでトレーニングするのが、単語・熟語・文法と一体になった構文の真の学習法です。もちろん最初からこれができるわけはないので、多くの文をこなして行くのです。
そしてこの5つが頭に浮かんだら「可能性を排除していく」のがコツです。ヒトは正解をいきなり選ぶより不正解を選ぶ方が得意だからです。この詳しい解説から次回はスタートします。
19【学習法編-6.構文編・第2回】単語・熟語・文法をフル活用してたどり着く「真の構文学習法」を完全公開
これまで読んでくださった方であれば、「構文だけを得意にしよう」というような発想は大間違いだと分かるはずです。そこで前回、構文学習法をお伝えする序章として「The truth that you know is important.」という例文を挙げて、「結果『に』正確にたどり着くように読む」ことが構文学習の核心であることに触れました。この構文学習の核心をより深く解説していきます。
単語・熟語・文法をどうやってフル活用すればいい?
この3つをただ「フル活用」しなさい、と述べるだけでは筆者の出る幕はもうありません。これから具体的にフル活用の方法をお伝えします。まず「The truth that you know is important.」という例文と、前回示したthatの区分をもう一度見てください。
thatの区別(基本5つ) | |||||||||||||||
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この表に書かれていることは中学単語と文法で順に学習したことだけでできています。しかし「that=形容詞で『その』という意味だよ」と習って、次に「代名詞で『それ』という意味もあるんだ」という具合にバラバラにthatは出てきます。これでは「文中でthatが出てきたらどうすればいいのか」という根本の問題になかなか迫れません。今まで習ったthatの用法を全て頭のなかに一瞬で思い出すトレーニングが必要です。それこそが「フル活用」するということです。
活用の仕方は「可能性を排除」することにあると前回述べました。それを示してみます。
「The truth that you know is important.」において、
thatのあとは不完全です。(「know=~を知る」なのに何を知るのかが書かれていません)
⇒2「that+完全な文」(後ろに完全な文が来るとき)の可能性が消えます。
⇒it isがないので3「it is…thatで強調構文を作る(1.2の例外)」の可能性も消えます。
⇒4「thatが代名詞(それ・あれ)」だとするとtruth that youと3つ名詞が並んでしまうので消えます。
⇒5.「thatが形容詞(その)」だとするとyouの前に形容詞が来てしまうので消えます。
⇒残った1「that+不完全な文」(後ろに不完全な文が来るとき)→thatは関係代名詞、だけが正解だとたどり着けるのです。
これは何も特別な読み方をしているわけではありません。英文が読める人はこの「可能性を排除」という作業を瞬間でこなしているのでどんどん文を正確に読んで行けるのです。これがあらゆる文でできることが構文学習のゴールです。
これで「thatなんて中学生でも知ってる」・「文法はもう完璧」などと簡単に言えないことが分かるでしょう。
もちろんthatに関してこのように鮮やかに・瞬間的にできるまでには時間がかかります。いろいろなところでバラバラに学習したthatをまとめておいて(できる方は頭の中だけでまとめてもかまいません)、実際に文の中にthatを見つけたときに「全ての可能性を思い出す⇒可能性を一つずつ排除する」という過程が自分でできるまでトレーニングするのです。
勘で「関係代名詞だろう」と根拠なく決めて偶然正解しても意味は全くありません。次に別な文を読んだときに合っているとは限らないからです。
そこでthatのように意味が多く品詞もいろいろあり、文の中で頻出するものは必ずまとめて理解しておかなければいけないことが分かりますね。
どうして名詞が3つ並ぶとアウト? どうしてyouの前には形容詞は置けない?
実は今、可能性を排除するときにあえて説明を省いた箇所が2つあります。ここに疑問なく読めた方はすでに構文学習が進んでいる方か逆にまだ踏み出せていない方です。
最初は「名詞が3つ並ぶとアウト」というところです。「そんな文法あったかな?」と思いたくなるでしょう。確かにお勧めした文法書にも直接は載っていないと思います。しかし文法は「組み合わせて使うもの」です。構文理解のために単語・熟語・文法を組み合わせて使いますが、3つそれぞれの中でもさらに組み合わせで使わなければいけません。
この場合、文法の第一歩である「文型」さえ理解できていれば「アウト」の理由が分かります。
SV・SVC・SVO・SVOO・SVOCという5つの文型は必ずどの文にも当てはまります。そして名詞がなれるのはS・O・Cです。ここで名詞が連続する可能性を考えるとOOとOCの部分で「最高2つまで」しか並ぶことはないと分かります。だから「名詞が3つ並ぶとアウト」として可能性を排除したのです。
「組み合わせ」で文法を使わなければならない意味が分かったでしょうか? 文型の解説をしてあるのに、さらに「名詞は3つ以上並ばない」などと書いていては文法書が何千ページあっても足りないからです。
同様に「youの前に形容詞が来てしまうので消えます」という部分も文法をしっかり学習していれば分かることです。「名詞の前に置かれた形容詞」=「限定用法の形容詞」とどの文法書にも必ず載っています。これをどんな文でも応用できなければせっかく文法を学習した意味がありません。
「you」=「あなた(たち)」と単語としては誰でも知っています。これと「限定用法の形容詞」という文法を組み合わせるのです。「あなた(たち)」とは目の前にいる人(たち)のことなので、限定できないのです。
例えば「clever you」=「かしこいあなた(たち)」と書いたら「あなた(たち)の中でかしこい人限定」という意味になり、「かしこくないあなた(たち)」も存在することになります。しかし目の前にいる「you」は1種類しかなく何種類も存在していないので、このような英語はありません。「cool Ken」=「かっこいいケン」などと書けないのと同じです。この場合も「かっこよくないケン」も存在しないと成立しないのです。
これが「youの前に形容詞は置けない」理由です。文法の学習で簡単だと思っていたことが、実際の文で活かすにはそう甘くはないと感じてもらえたでしょうか? ここまでできて初めて「単語・熟語・文法をフル活用して構文を理解した」といえます。そして初めて例文を「あなた(たち)が知っている真実は重要なものだ」と正確に理解できるのです。
「フル活用」とは暗記を徹底的に排除して論理で読むということ
このように単語・熟語・文法をフル活用せずにいちいち「名詞は3つ並ばない」などとメモして必死に覚えていたら、あっという間に英語が暗記科目になって苦手になるばかりか肝心の英語力も付きません。大切なのは「いかに最小限の暗記しかしないか」ということです。「最小限の武器」×「論理の組み合わせ」で英語を読んでいくのが最短ルートです。
「The truth that you know is important.」を正しく理解するために何も新しい知識を用いなかったことに気付いたでしょうか? 使ったのは中学単語と文法書で学習した(はずの)基本的な知識だけです。
しつこく繰り返しますが、「暗記は最小限に」×「論理的に組み合わせて使う」という2点をしっかり意識・実践するだけで英語学習法の最短ルートをたどることができ、英語力が大きく飛躍します。